
2025年 年頭所感
2025-01-13

大塚雅之 NPO給排水設備研究会会長理事
ネットゼロウォーター社会の担い手、次世代への期待
大塚雅之 NPO給排水設備研究会会長理事
会員の皆様、新年、明けましておめでとうございます。昨年は、元日に能登半島地方を震源とする地震が起こり、石川、富山、新潟などでは津波による甚大な被害を受けました。また、災害時のインフラの途絶により、飲料水の確保や下水の排除には困難を極め、人々の生活に大きな影響を与えました。改めて、給排水衛生設備の重要性とBCP・LCP対策の必要性を感じた新年の幕開けでした。また、地球温暖化から地球沸騰化への移行といわれる中、異常気象の影響で、わが国では年間猛暑(日最高気温が35℃以上)日数が過去最高を記録しました。一方、パリ・オリンピックでの日本選手団の活躍に心が熱くなった方々も多かったと思います。
異常気象の影響でアジア、アフリカ地域では世界的な水不足に苛まれており、農地の干ばつリスクも高まり、農作物の収穫へ影響や生物環境への影響も出ています。その問題解決に向けて、ネットゼロウォーター社会の実現に向けた取り組みが開始されています。特に、給排水設備分野では、使用水量の削減、雨水・排水再利用の促進、併せてグリーンインフラを介しての還元水の確保などを骨子としたネットゼロフォータービルへの関心が寄せられています。今年は、そのような国内外の動向を踏まえ、ネットゼロウォーター社会の実現に向けて、給排水衛生設備研究の真価が問われる一年となります。
その一環として、昨年は、空気調和・衛生工学会では、「ゼロウォーターの実現に向けて―水の新しい単位給水量-」について提言を行い、長年の懸案事項であったオフィス、病院、学校の3つの用途の建物の設計用単位給水量の刷新を図りました。その過程では、本研究会の若手・熟練技術者が一体となり、学会でのワークショップを開催し、多くの方々の意見も取り入れ、給排水衛生設備分野としては初めての学会提言となりました。また、昨年は、国際学術交流の場であるCIB W062国際シンポジウムがイギリス・ノーサンプトンで開催され、円安続きで渡航費も高騰する最中でしたが調査団を組織し、参加しました。その席上でもカーボンニュートラルの実現に向けての給排水衛生設備の取り組みと役割は、非常に重要であると感じました。同シンポジウムは、今年はネットゼロウォータービルの認証評価に実績のあるアメリカ・マイアミで開催されますし、2026年はスロベニアでの開催が予定されています。さらに2027年には、日本・横浜での開催を提案しました。今後の3年間、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、その一環となるネットゼロウォーターへの取り組みはもっと活発になってくるものと思います。本会におきましてもわが国独自のネットゼロウォータービルの概念の構築と具体的な提案に向けた活動を行うことが必要と考えています。
昨年の本会の各委員会活動を振り返りますと、出版委員会は創設40周年を経て、若手の考える10年後の給排水、災害時の井水の活用、温泉宿泊施設における省エネルギー、さらにネットゼロウォーターに関する動向と課題などタイムリーな特集を企画し皆様に情報をお届けしました。また、アジア建築設備推進委員会では、これまで過去10回(9か国)にわたって調査活動を行ってきた成果を踏まえ、アジア各国との建築設備のコラボレーションを目指して、「これからのアジアと日本の建築設備の協調・推進」と題しシンポジウムを開催しました。
学術委員会では、各大学持ち回りでの学生勉強会、修論発表会も継続しており、その活動の一環として多くの学生がCIB W062国際シンポジウムへも参加するようになってきました。また、財務委員会では、賛助会員の増加を図るために、新型コロナウイルス感染症拡大により、一時、中断していました賛助会員会も今春2月に開催する予定です。このように各委員会が活発に活動を行っています。最後に、昨年のプロ野球日本シリーズを振り返ります。26年ぶりの横浜ベイスターズの優勝に沸く、地元横浜の賑わいを感じました。下剋上優勝の立役者であるクリーンナップの活躍とともに、頭角を現してきたショート森敬斗選手らの次の世代の担い手の登場を予感させるシリーズでもありました。巳年は、「復活と再生」の象徴の年です。次世代がたくましく、熟練の給排水設備技術の魂を継承しつつ、新しい視点でこの分野を切り開き、再生を図ってゆく一年となるように期待しています。本年もよろしくお願いします。