年頭所感
2022-01-28
大塚雅之 NPO給排水設備研究会会長理事
給排水設備研究における中長期ビジョンへの期待
大塚雅之 NPO給排水設備研究会会長理事
会員の皆様、明けましておめでとうございます。昨年は、新型コロナウイルス感染「第5波」の最中、東京オリンピック・パラリンピックが開催されましたが、各国の選手たちの活躍に勇気をもらい、感動に心が湧いた一年でした。今年こそ感染拡大がおさまり、生活が回復に向かい、健やかな良い年になることを祈念しています。どうぞよろしくお願いします。
ポストコロナ、ウィズコロナへの対応が求められる現在、健康で安全、そして安心できる建築環境を創造するために、改めて給排水設備のあり方が問われています。一方、昨年、菅政権は2050年までに温室効果ガスの排出量ゼロを目指すことを宣言しました。このカーボンニュートラル化と脱炭素社会の実現へ向けた動向を受け、給排水設備の果たす役割も重要となります。そんな時代の転換期に、今後の給排水設備研究の目指す中長期ビジョンについて、会員の皆様とともに考え、実行に移していく一年としたいと思います。そんな期待を込めて次のような思いを抱きました。
先ず、水の安全性の確保、そして設備の維持管理の大切さを再認識することです。昨年、空気調和・衛生工学会主催のSHASE-206改定説明会をオンラインで拝聴しました。150名を超える多くの参加者が聴講する中、本研究会のメンバーの方々が、充実した解説を行い、本分野のプレゼンスも高まりました。感染症対策も含め規準改定の経緯や改定箇所の要点が良く理解できました。給排水衛生設備規準という、いわば「秘伝のたれ」を絶えず継ぎ足し、継続して、衛生性を維持するための技術を切磋琢磨することの大切さを感じました。
次に、新たな研究分野やテーマを創出することが必要です。現在、エネルギー消費量の削減を目的としたZEBやZEHに関する技術開発とそれらの普及が優先されています。一方、われわれの分野では、建築・敷地内での全体の水収支をゼロとするゼロ・ウォータービル(ZWB)への関心も高まりつつあります。その達成には「雨水・井水等の代替水量と排水の浄化水・グリーンインフラ等による地下水へ還元量の和が、水消費量に等しいとすること」が条件とされています。一般の建物では達成は難しいものの新たなテーマと言えます。COVID-19やレジオネラ症などの感染症対策を医療分野と連携して総合的に扱うこと、住宅での在宅勤務やオフィスのフリーアドレス化が進むことによる水使用量や水まわりスペースのあり方も変化することへの対応もこれからの研究テーマと言えます。ニューノーマル社会への適用を考えた新たな「錦の御旗」が必要です。
最後は、アジアを中心とした技術情報の国際発信です。昨年は本会でも学術委員会が中心となりオンラインを用いたサマーセミナーを実施し、CIB W062国際シンポジウムもオンラインで開催されました。新たな情報発信ツールとして、対面とオンラインを併用したハイブリット方式での情報発信が一般的になると思います。本会ではアジア諸国との技術交流はアジア建築設備推進委員会が活動を継続していますし、中断していたアジアシンポジウムなどもオンラインを取り入れ再開し、リアルタイムでの学術・技術の交流の機会を持つことに期待しています。
このような問題提起をたたき台に給排水設備研究の中長期ビジョンについて、理事会、そして活躍が期待される次世代研究者・技術者とともに考え、最新の学術・技術情報を提供し、社会へ積極的に国内外へも迅速に情報を発信できるプラットフォームのあり方を模索したいと思います。会員の皆様には、そのような活動にご理解いただき、積極的なご支援、ご参加をお願い申し上げます。
中国伝来の十二支は、もともと植物の循環する様を表しており、寅年は、十二支の3番目で、子年の新たな命が種の中で芽生え始め、丑年で種の中で育ち、寅年で、「春が来て根や茎が生じて成長する時期、草木が伸び始める時期」と言われているそうです。給排水設備研究を牽引する次世代が成長し、また、会員の皆様にとっても新たなスタートを切れる一年となることを祈念します。