
給排水設備研究2023年7月号
2023-07-25
特集:海外で貢献する日本の給排水設備技術:トイレ、排水処理、管路維持管理
Japanese water supply and drainage system technology that contributes overseas: toilet, wastewater treatment, pipeline maintenance
給排水衛生設備は、人の生命維持および健康保持にかかわる衛生的環境を確保することが基本的な役割であり、人が生活を続ける上で水まわりの環境を安全かつ衛生的に、快適なものとすることが望まれるのは周知の事実である。
2015年9月の国連総会で採択され、17の目標を掲げたSDGs(持続可能な開発目標)でも、目標6のキャッチコピーとして「安全な水とトイレを世界中に」を挙げている。実際、世界では安全に管理された飲料水やトイレを利用できない人が多数いるのが現状である。
本特集では「海外で貢献する日本の給排水設備技術」と題し、前号の「飲料水浄化、飲料水供給」に続き、本号では「トイレ、排水処理、管路維持管理」として、日本の給排水設備技術が海外で貢献している現状を紹介させていただいた。今後さらに取り組むべき技術分野や課題等についてもこれを機に考えていくことが望まれる。
なお、本特集号の発行に際し、ご執筆、ご協力いただいた各位に感謝いたします。
1.開発途上国におけるバイオトイレ及び新浄化装置 — 橘井敏弘(正和電工(株))・大塚俊彦((一社)埼玉県環境検査研究協会)
世界的なトイレ問題への解決策として、水の代わりにオガクズを活用して「小便、大便、トイレットペーパー」の分解処理を行うバイオトイレの“Bio-Lux”、さらに生活雑排水の処理へのニーズから、炭の吸着効果を利用した新浄化装置である“Bio-Lux water”の海外への普及が図られている。これまでの海外貢献のうち、ベトナム社会主義共和国でのバイオトイレ・新浄化装置の普及実証事業やカンボジア王国でのバイオトイレの普及可能性調査報告について紹介している。
2.無電力・無放流の汚水処理システムをインドへ — 松本安弘(大成工業(株))
開発された汚水処理システム“TSS(Taisei Soil System)”は、消化槽と土壌処理の2つの処理装置から構成されており、消化槽では嫌気性処理の後、ろ過された汚水が土壌処理に送られる。土壌処理では湿潤散水処理材により土壌内に汚水を浸潤させ蒸発散され、敷地内完結型の汚水の無放流処理装置となっている。無電力、維持コストが低い、メンテナンスも簡易であることから、ソロモン諸島での「アジア水環境改善モデル事業」やインドでの「環境配慮型トイレの導入にかかる普及・実証事業」に採択されており、それらの状況を紹介している。
3.グリース阻集器等の海外技術者への研修事例 — 小南和也((一財)日本建築総合試験所)
阻集器に関する海外技術者への技術研修として、台湾で開催された阻集器国際研究会での我が国のSHASE-S217「グリース阻集器」、SHASE-S221「オイル阻集器」についての発表のほか、発展途上国の下水道事業従事者にする「下水道システム維持管理」研修プログラムについて紹介している。
4.地中探査による地下情報の把握 — 石内貴之(フジテコム(株) 東京支店)
我々の生活環境において、上下水道管・ガス管・電気通信ケーブル等が数多く地下に埋設されており、これらの新設・切り回し・廃止を行う際に、図面と実際の現場状況が異なると断水・停電・通信等の障害にもつながりかねない。その解決策として、目に見えない地下情報を把握するために開発された地中探査装置が活用されている。海外貢献として、それらの装置をソロモン諸島やサウジアラビア国における「無収水対策プロジェクト」に提供しているとともに、延べ88か国1800名に及ぶ海外研修生を受け入れている管路維持管理技術研修について紹介している。
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