
給排水設備研究2023年4月号
2023-04-25
特集:海外で貢献する日本の給排水衛生設備:飲料水浄化、飲料水供給
Japanese plumbing system technology that contributes overseas: drinking water purification, drinking water supply
給排水衛生設備は、人の生命維持および健康保持にかかわる衛生的環境を確保することが基本的な役割であり、人が生活を続ける上で水まわりの環境を安全かつ衛生的に、快適なものとすることが望まれている。
2015年9月の国連総会で採択され、17の目標を掲げたSDGs(持続可能な開発目標)でも、目標6のキャッチコピーとして「安全な水とトイレを世界中に」を挙げている。実際、世界では安全に管理された飲料水やトイレを利用できない人が多数いるのが現状である。
本特集では「海外で貢献する日本の給排水設備技術」と題し、本号と次号の2号にわたって、日本の給排水設備技術が海外で貢献している現状を紹介させていただくとともに、今後さらに取り組むべき技術分野や課題等についても考えていきたい。
なお、本特集号の発行に際し、ご執筆、ご協力いただいた各位に感謝いたします。
- 横浜市水道局による水道事業の国際貢献への取り組み 青木一義(出版委員会) 横浜市の水道は1887(明治20)年に日本で最初の近代水道として創設され、今日まで135年以上の歴史を有する。この間に培ってきた水道事業に関する技術や経験が、国際貢献としてアジア、アフリカなど開発途上国が面している水問題解決のために活かされている。本稿では、横浜市水道局によるこれまでの取り組みを紹介している。
- 日本発の生物浄化法を海外へ広める 中本信忠(信州大学名誉教授)
日本では水道施設設計において急速ろ過が浄化法の主体となっているが、海外では1960年代から英国式の緩速ろ過が薬品を使わず、安全な浄化方法として再評価されてきている。この緩速ろ過は微小生物群集の食物連鎖による生物処理浄化法であり、建設コストのほか薬品や電力コストも低減できることから、開発途上国への国際貢献として、この浄水技術の普及を図っている状況を紹介している。 - バングラデシュにおける天水活用ソーシャルプロジェクト-すべての人に安全な飲み水を- 村瀬誠(天水(あまみず)研究所代表)
バングラデシュ沿岸地域のほとんどの農村には水道がなく、今日でも遠く離れた池や井戸まで水を汲みに行っている。また、地下水のヒ素汚染(自然由来)により多数の井戸が深刻な状況に至っている。この解決策として、エネルギーやコストが多くかかる逆浸透膜(RO膜)による高度処理に替えて、世界の年間降水量の2倍を有するバングラデシュの気候と雨水の水質に着目し、国際貢献として取り組んだ「天水(あまみず)活用ソーシャルプロジェクト」を紹介している。 - ろ過交換不要の移動式水処理装置 モバイルシフォンタンク(Mobile SIPHON TANK)について 江崎洋・篠崎大介(日本原料(株) 本社・海外事業部)
開発以来、国内の多くの公共浄水場に採用されてきた飲料水供給用の“モバイルシフォンタンク”を活用した国際貢献として、2013年にフィリピンで発生した巨大台風「ヨランダ」による被害やラオスで頻繁に生じた洪水災害に対し、この装置を活用して飲料水確保を行った実施例を紹介している。
出版委員会 青木一義
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