
給排水設備研究2022年4月号
2022-04-25
特集:食品産業・農林水産業と水
“Food industry, Agriculture, Forestry, Fisheries” and water
2021年11月13日に国連気候変動枠組条約第26回締決国会議(COP26)の成果文書『グラスゴー気候合意』が発表され、世界の気温上昇を産業革命前から1.5℃上昇に抑えるために世界が「努力を追求する」と明記されました。これは2015年に採択されたパリ協定の『2℃を十分下回る水準で維持する事を目標とし、更に1.5℃以内に抑える努力をすべき』といった表現から、一歩前進したものと言えます。しかし、今までの各国合意事項を全て満たしたとしても、地球の平均気温は2.4℃まで上昇するという試算があり、この数値が仮に正しいのであれば、『自然の恩恵である水』が、一転して『食料を奪い、生命を脅かすもの』に豹変してしまう事になりかねません。そしてその兆候が世界のみならず、今現在の日本でも既に起こっている事は、ニュース等でご存じだと思います。
今回の特集は、『水』を中心に据えて、『食』と環境に対する取り組みの例をご紹介したいと思います。
・『水資源とサステナビリティ~食品産業の取組み』
食料生産と水との関係では、今まで述べてきた気候変動の影響や地域特性を無視できません。始めに世界と日本の水事情に関して、大まかではありますが解説した上で、提起された課題に我が国の食品産業がどのように取り組んでいるか、その最前線を明治グループの資料提供他のご協力を頂いて紹介しています。
・『豪雨に対応するためのほ場の保水・排水機能活用手法の開発~農業生産と地域減災活動を両立する手軽な「田んぼダム」による豪雨対策~』
気候変動による影響は渇水だけではなく、近年、頻繁と思えるほど繰り返される豪雨・洪水被害についても言えます。数十年に一度という豪雨が毎年のように発生している印象がありますが、豪雨による広範囲な農作物への被害緩和、抑制策の一例としての『ほ場の保水・排水機能』について、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究部門 北川氏に解説して頂きました。
・『エンサイによる農業用貯水池の水質浄化実証試験 エンサイの水耕栽培によるアオコの発生を抑制する効果』
一方、農業用水の貯水も重要な生命線です。農業利用の他、多面的な機能を持つ拠点として、ため池がありますが、水質面の維持管理等、複数の課題がありました。その解決に向けた『ため池の水質浄化実証試験』について、豊富なデータを交えて沖縄県環境分析センターの上原氏・真栄田氏、玉城地域農地・水・環境保全管理協定運営委員会 當山氏に紹介して頂きました。
・『過冷却完全解除型シャーベットアイスによる水産物の鮮度保持』
水産に目を転じて、真水と海水の混合割合を調整し、過冷却完全解除型のシャーベット状にする事で既存のシャーベット状氷では限界があった鮮度維持効果を向上させる技術が実用化されました。実際の納入先の評価と共に、概要を高砂熱学工業の松平氏に紹介して頂きました。これは空調技術の他分野への展開になります。
・『BISTRO下水道(食と下水道の連携)の活動について』
生産された食物・飲料物が消費された後の、農業への還元が研究されています。下水処理の過程で発生する下水由来汚泥から肥料を生産し、環境に還元する技術の開発と実証試験結果について、公益社団法人 日本下水道協会 研究開発部の前田氏に解説して頂いています。
・『分離職人~全てのリサイクルの前処理で活躍~』
最後に、農林水産業、食品業界、流通販売機構を通じて消費者に渡った後の包装材・缶・瓶類等を選別、洗浄してリサイクルに回す事で、環境負荷削減に貢献する分別技術と分離する意義について、モキ製作所 藤牧氏に紹介して頂きました。
執筆頂いた専門家の方々に、また、貴重なデータを提供し、チェックして頂いた明治HD様に感謝いたします。
出版委員会 佐藤 博
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