
給排水設備研究2022年1月号
2022-01-25
特集:脱炭素時代の給排水衛生設備
Plumbing System of a Carbon neutral society in 2050
我々が活動する給排水衛生設備分野は、建物(住宅・非住宅)の建設、運用、廃棄にいたるまでの活動に関わりますが、運用時のエネルギーの消費という視点で考えますと、カーボンニュートラルの達成までに大きな変革が必要です。都市ガスを燃焼すれば二酸化炭素を発生しますが、住宅の給湯や調理の分野ではそれが当たり前になっていました。国の方針では省エネをより一層進めエネルギー消費の絶対量を削減した上で、ある部分は電化とカーボンフリーの電力利用を推進し、都市ガス配管網を生かすエリアでは、将来はカーボンフリーのガスを供給する計画です。一方で水道供給の分野では、浄水や配水の工程に電力を使用しますので、節水化や水のリサイクルを進めて水使用量を削減することが大切になります。使用した水は排水となり、下水道整備地区では下水処理場に、それ以外の地域では浄化槽により排水を浄化します。この工程で電力を使用します。同時にCO2の25倍の温暖化係数のメタンガスを発生させますので、排水処理分野での検討も必要です。生活による厨芥については、ディスポーザーや合併浄化槽による処理からバイオガスにして再利用する取り組みが始まっています。建物の建設から廃棄にいたる工程でライフサイクルCO2の視点で、使用する材料の脱炭素化や長寿命化をはかることが必要です。
本号においては、巻頭言に「脱炭素社会に向けた浄化槽における地球温暖化対策」として、東洋大学の山崎先生に、浄化槽分野の温室効果ガス発生のメカニズム・地球温暖化対策について執筆いただきました。次に、カーボンニュートラルの先進国である「デンマーク王国の給湯・冷暖房の脱炭素化の取組」について、デンマーク王国大使館の田中いずみ様に執筆いただきました。更に「カーボンニュートラル時代のガス供給」について、日本ガス協会の武市篤憲様、高橋拓二様、野口隆浩様に、今後未利用エネルギーとして一層の普及が期待される「太陽熱給湯設備」について、ソーラーシステム振興協会の原人志様に、それぞれ執筆いただきました。最後に国の取組という視点で公開された「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方」を出版委員会にて解説させていただきました。
2030年までは8年しかありません。2050年までに開発する必要のある技術もあり、我々技術者の役割は一層重要になってきます。今後の皆様の業務の中で参考にしていただければ幸いです。
- 巻頭言 脱炭素社会に向けた浄化槽分野における地球温暖化対策–山崎宏史(東洋大学理工学部都市環境デザイン学科 教授)
- 1.給湯・冷暖房の脱炭素化―デンマーク王国にみる柔軟なエネルギー・システムの構築と地域熱供給—田中いずみ(デンマーク王国大使館)
- 2.カーボンニュートラル時代のガス供給について—武市篤憲・高橋拓二・野口隆浩(一般社団法人日本ガス協会)
- 3.太陽熱給湯設備の普及と展望—原人志(一般社団法人ソーラーシステム振興協会)
- 4.「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方」について—出版委員会
出版委員会 土井章弘
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