
給排水設備研究2020年10月号
2020年10月25日
特集:給湯設備のこれから
Hot water system in the future
給排水設備分野で一番エネルギーを使うのは給湯です。給湯には熱が必要ですが、熱エネルギーはエネルギーの最終の形なので廃熱を利用できるのが一番都合がよいと言えます。今後再生可能エネルギー利用や分散電源化が進む時代になりますが、コージェネ・バイオマス発電・燃料電池などの発電に伴い発生する廃熱をいかに上手に使うかが課題になります。
建物の給湯需要は用途によって傾向が異なってきます。ホテルでは宿泊者の一人の湯の使い方は予測ができるものの、宿泊客数の変動に大きく影響を受けます。客室や大浴場で湯切れのないように柔軟に追随できるように準備する必要があります。高齢者施設は毎日の入浴・供食スケジュールがパターン化されているので給湯需要予測が立てやすい用途です。病院は供食の冷凍化や外注化、入院の短期化により給湯負荷が少なくなる傾向にあるものの透析用途を代表に全体としての給湯負荷需要が多い用途です。厨房では節水節湯化が進み、自動食洗器の使用湯量は湯の循環利用によりかなり少なくなってきました。住宅系では、潜熱回収型ガス給湯やヒートポンプ給湯機などの高効率熱源、熱ロスを抑える保温浴槽、燃料電池などの廃熱利用など戸別機器が主流で中央式給湯設備での廃熱利用事例は少なく、清掃工場の焼却廃熱を利用した熱供給事業が継続しています。
海外では、電力の再生エネルギー100%化を国として目指しているデンマークの電気・熱供給事業が先進的と言われています。風力発電・太陽光発電は、天候により発電量が左右され、電力需要が少ない中間期で、発電量>電力需要となるケースが発生し、余った電気エネルギーを何らかの形で蓄えたい状況になります。デンマークの電力市場は変動制をとっており、風力発電が勝る時に電力価格は安価になります。大容量の蓄電池で電気をストックするには設備コストが高くなるため、ヒートポンプまたはヒーターで熱を作り蓄熱槽に熱をストックし必要な時に熱供給に利用する運用をしています。日本においても四国、九州において発電量>電力需要となって太陽光発電の出力制御をする事態が発生しており、今後このような熱電供給事業が重要になると思われます。
特集では、今後の給湯設備の在り方と共に、将来の給湯設備につながる最新の実施事例や最新の技術を紹介いたします。
巻頭言 熱エネルギーとして給湯の需要と活用法―RHC100とVPPリソースから考える 赤井仁志(福島大学)
1.ホテル・温泉旅館での給湯の省エネルギー運用の実態と今後の設計の在り方 嶌田成二((株)ユニ設備設計)
2.レストラン・厨房設備の食器洗浄機を中心とした節水、節湯、給湯エネルギーの省エネ化 河原拓(ホシザキ(株))
3.LNGサテライトによる環境とBCP に対応した沖縄リゾートホテルプロジェクト 山下太郎((株)竹中工務店)
4.山形県湯野浜温泉「温泉未利用熱を活用した集中給湯による温泉街全体の省エネルギー事業」 高木禎史(三機工業(株))
5.廃熱回収型ボイラ給水加温ユニット(省エネ大賞、日本冷凍空調学会技術賞 受賞) 大谷和之(三浦工業(株))
『給排水設備研究』は、NPO給排水設備研究会会員に配布される雑誌です。会員になっていただければ会費(入会金1,000円、年会費6,000円(正会員、学生会員は3,000円))のみで購読できます。企業・団体の賛助会員も募集しています。詳しくは、給排水設備研究会についてをご覧ください。
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