
創立40周年記念式典にあたっての大塚雅之会長理事挨拶
2023-11-10
みなさま、ご多忙にもかかわらず、NPO給排水設備研究会、創立40周年記念式典にご参加くださり、まことにありがとうございます。そして、ご臨席を賜りました建築設備技術者協会会長の赤司泰義先生には、厚く御礼を申し上げます。
今日は創設当時からの会員の皆様、当時をご存じない方々もおられると思いますので、少し長くなりますが、創設から40周年を振り返りながらご挨拶としたいと思います。
本研究会は1984年に、初代会長の紀谷文樹先生(東京工業大学名誉教授)の呼びかけにより「国際的視野に立って給排水設備分野の研究及び技術水準の向上と情報交流に努めるとともに、会員相互の親睦を図ること」を目的とし創立されました。その創立の総会が二子玉川の富士観会館にて開催されました。そのサポートをされていたのが、市川憲良先生(東京都立大学名誉教授)でした。自分も若輩の24歳の大学院として参加しました。
その後、1990年から故泉忠之会長(関東学院大学教授)が引き継ぎ、同年10月には創立10周年の記念式典が工学院大学で開催され、10年記念誌「給排水衛生設備20年のあゆみ」が刊行されました。この記念誌は、給排水設備研究に大きな影響を与えたCIB W62(現CIB W062)の第1回シンポジウムの開催された1972年から研究会創立前年の1983年までを前史、加えて創立以降の10年を年譜としてまとめました。この時代は、国際化も視野に入れ、技術・規準が大きく変化しようとしていた時代です。また、バブル期へ向けて、非常に元気のあった時代でした。
また、1994年から鎌田元康会長(東京大学名誉教授)が、2000年から飯尾昭彦会長(日本女子大学名誉教授)が、研究会においてその理念と活動を継承し、2003年10月には創立20周年記念式典を工学院大学で開催しました。その20周年記念誌「水とあゆむ」を刊行しましたが、10周年の記念誌が年譜掲載程度の内容にとどまったことに対し、実質的な内容とし、それを常に手元に置き、より会員の皆様に役立つようにとの意見のもと、技術面にテーマをあて、テーマごとに新技術の紹介や動向、問題点と課題などについて掲載しました。内容はトピックスとして幅広い最新の情報や動向について示し、また、要素技術についてはシステム、機器・器具類、配管、水質などに分けて、技術紹介、今後の方向性などを記載しました。いわば新しい給排水設備技術の開発へ向けての躍動期でもありました。
さらに2007年から市川憲良会長、2011年から坂上恭助会長(明治大学名誉教授)が牽引され、2013年10月に創立30周年記念式典を開催し、30周年記念誌「水の時代」を刊行しました。まさに21世紀は環境の世紀、水の世紀とも呼ばれ、水資源を建物でより有効に利用することが世界的に要請されており、衛生的かつ快適・利便な水環境の追求を行うため、水の世紀をどのように志向して行こうかを模索し、蓄積された給排水設備技術の基本を踏襲するも、その枠を打破する革新な技術に取り組んだ時代と言えます。
2017年から7代目会長として微力ながら大塚が引き継いでいます。まず、この間におきまして、ご尽力いただきました歴代会長、さらにその傘下で研究会を躍進に貢献された役員・会員メンバー、関係各位に敬意を表し、厚く御礼、申し上げます。ありがとうございました。
さて、今年創立40周年を迎える研究会ですが、過去から現在、そして未来に続く水環境、給排水設備の将来をテーマとし、タイトルは「水の未来」としました。お手元にあります記念誌の題目をそれに合わせました。思えば2011年の東日本大震災からの復興に向けて10年を超え、災害時の給水及び水源の確保、加えて地球温暖化から地球沸騰化の時代を迎え、異常気象によって都市部での豪雨の発生と浸水対策など、まさにレジリエンスへの対応として給排水衛生設備の必要性がクローズアップされた時代とも言えます。
その最中、2020年には中国武漢で発症した新型コロナウイルス感染症が全世界に拡大しWHOはパンデミックとして認定しました。空気環境の衛生性とともに給排水衛生設備での感染防止対策の必要性が指摘されました。諸外国では水回りでの飛沫や衛生性の問題、排水系統から感染防止、湯水のレジオネラ感染症対策などがジャーナルでは取り上げられてします。
また、コロナ禍を経てABW(Activity Based Working)対応のオフィス空間の創造、人々の仕事や生活様態も大きく変化しました。また、建物・都市の水循環を考えたネットゼロウォータービルといったキーワードも登場し、世界がそのあり方を模索しつつあります。また、研究会として活動推進しているアジア圏での水環境問題と設備技術発展との交流、貢献といったことも大きなテーマとなっています。まさに強靭にして多様性にしなやかに対応できる給排水衛生設備が求められていると思います。併せて、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、水環境、給排水衛生設備からのアプローチも必要とされています。
このような背景の中、新たに日常生活にオンラインによる情報発信と情報共有の方法も定着した今、給排水設備研究に関する国内唯一の専門家集団として、また国内外のネットワークを活用し、最新情報を発信できるプラットホームとして、プレゼンスを高め、社会に貢献することがこの先10年のわれわれの使命であると考えています。
この40周年記念を契機に気持ちを新たにして、本研究会は、関連学会、関係諸団体と一緒に、給排水設備分野の新たな展開と価値創造に向けて邁進して行くことを誓います。
最後にみなさまの一層のご支援とご協力をお願いしまして、会長の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。
NPO給排水設備研究会 会長理事 大塚雅之